担当者コラム

2024年5月6日 (月)
ある日のこと

 今年ほど桜の開花予報が気になったことはない。

 私がのちに保佐人の担当となるKさんと会ったのは、2年前の夏、すでにロングショート(このことば、どうにも変だが介護業界では当たり前に使われている)で、妻長女とともにお世話になっていた施設であった。病気はあったが積極的治療を望まず、食事管理もされ元気な様子であった。ただし、今後の行先や金銭管理などなど問題山積の家族であった。

 そして、夫婦で特別養護老人ホームへの特例入所を待っていたところで妻が緊急入院。経管栄養の状態でも受け入れ可能と特養から返事をいただきほっとしたのもつかの間、翌年明け早々に亡くなってしまった。

 現在は、2人で入所するはずだった特養に1人で入所し、初めは慣れない所で家族もいない状況に不安そうであったが、徐々に慣れ落ち着いた生活を面会するごとに感じ安心していた。またグループホームに入所し昼間は作業所に通いだした長女の月一回の面会も楽しみとなっていた。

 在宅の頃からとても仲が良かったんだろうなと思わせる面会に立ち会い、3月は“お花見”をしたらもっと盛り上がるかも、と思い立った。それぞれの施設の了解、保佐人担当者の予定、今は車いす移動になっているKさんのために介護タクシーの予約が必要であるため早く日程と場所を決める必要があった。2月末に、3月26日昼食後に出発、行先は近くの公園と決めた。もちろん、体調が悪かったり、まだコロナの心配もあったため、実行できるかその日まで不安だった。

 さて当日は?

 当日まで毎日天気予報をチェックしていたが、見るたびに降雨確率が上がっていく。その予想は裏切らず朝から大雨、そして私が施設に到着したお昼すぎには雷まで鳴っている状況。それに加え、今年は例年になく桜の開花が2週間ほど遅れていて開花日には程遠い日になってしまった。そんな日でも本人達は行く気満々、さすがに外で散策は無理なので、ドライブしてちょっと先の山の中腹の施設ロビーと変更した。私達の心配をよそに、車中でも話が弾み、「この道は○○(亡妻の実家)に行く時に通った道だよねー」と、長女はいつも以上にテンションが上がっていた。ロビーでも、私達が持参したそれぞれのおやつを食べ、家族でカラオケに行った話などを聞いた。特養に戻った時は、いつものように長女との投げキッスで別れを惜しんでいた。

 まぁ良かった実行できて、2人で外出することに意味があるんだから、とひとりで納得していたのでしたが、その2,3日後には、長女はすっかりその日のことを忘れていたらしい。でもその時間はとても楽しいときであったことを私達は見ているので、また懲りずに、来年は満開の桜を見られたらいいなあ、また2人とも元気で外出出来たらいいなと思っている。

(KF 記)

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